エストニア、オリンピックのフェンシングで、個人で胴!団体で金!北岡大使より、お祝いの言葉

令和3年7月27日
こころに剣士を
ハープサル駅舎にて(2020年3月撮影)
開催中の東京オリンピックでエストニアのフェンシングが、23日に個人で銅メダル、そして27日には団体で金メダルに輝きました!
カトリナ・レヒスさん、ユリア・ベルヤイェヴァさん、エリカ・キルプさん、そしてイリナ・エンブリッヒさんの御健闘を称え、心よりおめでとうと申し上げます。
この快挙の知らせを受けて、私は、最も好きな映画の一つ「こころに剣士を」を思い出しました。
それは、エストニアのフェンシング選手兼コーチであるエンデル・ネリス氏の実話をもとにした映画です。
ネリス氏はソ連の秘密警察から逃れ、当時ソ連に併合されていたエストニアのハープサルで教師となり、子供たちにフェンシングを教え始めます。
ネリス氏の卓越した指導のもとで、めきめきと腕を上げて行く子供たち。
彼らは、レニングラードで開かれる全国フェンシング大会への出場を夢見るようになります。
しかし子供たちを引率してレニングラードに赴けば、秘密警察に逮捕されてしまうかもしれない。
子供たちの熱意か、自分自身の安全か。
ネリスのとった選択は、命がけで、かつ最も英雄的なものでした。
このような形で始まったエストニアにおけるフェンシングの伝統が、今回のオリンピックで、美しく開花してみせました。
私の記憶の中に、昨年3月に訪れたハープサルで、スクレス市長の案内で訪れた鉄道博物館のプラットフォームが蘇りました。
ようやくソ連から釈放されてハープサルへの帰還を果たしたネリス氏が子供たちや恋人に暖かく迎えられる、「こころに剣士を」のラストシーンはここで撮影されたのです。
エストニアは、私が最も尊敬している国です。
700年にわたる大国の支配、そして半世紀にわたるソ連の併合という悲しい歴史を有していますが、その歴史の流れの中で、たった一時たりともその伝統を失うことなく、独立回復後には目覚ましい経済発展で、今や「デジタル最先進国」とさえ呼ばれるようになりました。
ネリス氏がソ連時代に命がけで培ったフェンシングの伝統も失われることなく、しっかりと受け継がれ、今オリンピックという最高の舞台で美しく開花しました。

一昨年エストニアに着任以来、感動する瞬間が多かった私ですが、今回は最高の感動を頂けたと感じています。
4人のフェンシング選手と、彼女らを産んだエストニアに心より感謝です!